空き家を探す

2021年05月21日
たにべえ

『移住希望度0%』の僕が移住するまでに至った話。


こんにちは。いきなりうな垂れていてすみません。市民ライターのたにべえです。

先日「今週末は家族でBBQやるかぁ!!」と息巻いていたのに、その前日に家で飲みすぎて、当日は二日酔いの中、家族のために火を起こし、肉を焼き続けた結果、このような状態になってしまいました。(黄色いごみ袋がいい味出してるね。)
きっと年のせいだと思いますが、焼き肉はカルビもバラもロースももう食べれません。
そのうえ二日酔いというデバフがかかっていたので「肉を見るのも嫌!」と思いながら肉を焼き続けるという地獄のようなBBQを開催してしまいました。
最近はハラミとタンの2択です。あと海老。海老があればBBQに肉はいらないのかもしれません。
あーしんどかった。



さて。近年、僕も含め、パートナーが移住に対してスーパーアグレッシブだった結果「自分も移住しちゃいました。てへぺろ。」という旦那さん、パパさんが増えています。
ほっこり雲南を読んでいる方の中にも、パートナーに「移住したいなぁー」って空気をガンガンに出されて困っている人もいれば、「パートナーが全然乗り気じゃない!んもうっ!!」ってイライラしている人もいるかもしれません。
妻の実家がある島根への移住を希望された僕ですら困りましたが、2人とも縁もゆかりもない土地に住もうと相談されたらスーパー困りますよね。(何言ってんの?って思うよね。どした?って。)

僕は、妻が島根出身でなければ雲南市に住むことはなかったと断言できます。
「田舎って和式便所しかないんでしょ。」と本気で思ってましたから。
住んだこともない土地への移住をパートナーに相談される時点で、状況の整理が必要なのに、「移住したい!」と思っている側の人から結論を急かされがちな気がするんですよ。(強行突破でいけると思うな。)
僕自身も、「来年には移住するよ!」と妻に言われた時は、まずパニックになりました。
「するよ!」じゃないし、色々問題があるだろう。と。
そもそも提案された側が「なぜ移住に対して前向きに考えれないか。」ということが無視されがちではないでしょうか。
提案する側はすでに移住という名のリングに立っているかもしれませんが、提案される側はリングにすら立てていません。
こっち(提案される側)からするとノーガードの状態でいきなり右ストレート喰らわされるわけです。顎、はずれます。
そのくらい「移住したいんだけど。」という提案をパートナーにされた時の衝撃は大きかったです。
誰だって一発KOよ。こっちからしたらゴングも鳴ってない。っていう状態です。

今回は、そもそも「移住に前向きになれない」人たちに向けて(また、前向きになれない人にイライラしている人へ向けて)、僕自身が妻に移住を切り出された時から、どのような経緯で移住に向き合うに至ったかを共有したいと思います。
それぞれご家庭の事情は違うので一概には言えませんが、僕の場合の話をお伝えし、参考になれば幸いです。
移住してからもいろいろなところで、コミカルに移住の経緯を語ることってあるんですけど、実際のところそんなに簡単には決断してないんですよ、マジで。
仕事中にうつろな目になりすぎて同僚に心配されるくらいには悩みました。(ノリで来てみるのもいいけど、いろいろ考える時間はあっていいと思う。)




1)広島での暮らしと帰省

では、そもそも僕がどこから移住してきて、どんな生活を送っていたのかということから書いていきます。
移住前の生活がイメージできないと皆さんも「自分と重なる」部分を見つけづらいと思いますし、僕がスペシャルな環境からスペシャルな環境に移住したわけではない「ノットキラキラ移住者」であることを知っていただきたいと思います。(凡人の中の凡人です。)

僕はお隣の広島県から移住してきました。移住する前のステータスはこんな感じ。

●年齢:27歳
●職業:会社員(IT・通信業)
●年収:250万くらい
●家族構成:妻、娘(2人) 4人家族
●住居:2DK アパート
●家賃:60000円(駐車場1台)

RPGでもメインパーティーには入れないタイプのキャラのステータスです。
年収はスーパー低かった(転職して2年目、苦しかった。)です。
タイムイズマネー。お金よりも時間を大切にしたかった僕は、その両方を手に入れるほどの能力もなく、ライフワークバランスを重視し、それが可能な企業に勤め、家族で過ごす時間を優先することに命をかけていました。
平日はチャイムと同時に退社。自転車爆走で保育園まで娘を迎えに行き、風呂を洗って一緒にお風呂に入って、お酒を飲んで就寝。
休日は自宅から歩いて3分のショッピングモールに遊びに行ったり、自宅の徒歩圏内で十分に楽しめる施設盛りだくさんの便利な場所に住んでいました。
自転車で広島の中心街まで30分程度、最寄駅も徒歩10分と、生活環境に何ら不満はありませんでした。

そもそも、移住をする動機は、何かをきっかけに「田舎に帰りたいな。」と思い始めることからではないでしょうか。
近年であれば、地震等の影響で「住む場所を変えたい。」というのがきっかけになる方もいれば、親の介護等、家族の事情で移住を考え始める方もいるかもしれません。
今の生活を続けることへの不安や不満(マイナスな部分)が原動力となるパターンは少なくないと思うんですよね。(農業やりたい!みたいな人は別。)
それに比べ、僕ら側(連れてこられる側)はそういった動機がまったくないところからスタートします。
こういった人にいきなり移住を切り出し、決断をせまること自体がナンセンスだと思いませんか?まだ移住を“する”か“しない”かという土台にすら乗れていないのですから。

移住先の土地に、実際に足を運ばなければ、SNSやネットのキラキラした情報だけで移住なんて決めれるわけがない。という人が大半だと思います。
でも足を運んだからといって決断できるわけでもありません。僕の場合、アンラッキーなことに(笑)、雲南市に妻の実家(当時、妻の母が古民家を借りて暮らしていた。)がありました。
そこへ年に何回か帰省をするタイミングがあったんですよね。
子供が自然の中で遊ぶ姿を見て「いいな~」とも思いましたが、その裏では「帰省ってそういうもんじゃね。」と思う自分がいました。
連休には田舎に帰り、穏やかな空気に癒され、また都市部に戻って休み明けから馬車馬のように働く。
僕はそういう父親の姿しか見たことがありませんでしたし、自分もそうやって生きていくもんだと思っていました。
おばあちゃんやおじいちゃんには“たまに”会うことに価値があるんだと子供のころから思い込んでいました。
だから僕的には、足を運ぶ機会があってもなお「帰省先の田舎に移り住むなんてあり得ない。」と思っていました。




2)移住関連のイベントに嫌々参加

2018年の2月頃、別のコラムでも何回も書かせてもらっていますが、妻から『しまねUIターンフェアin広島』に誘われました。
島根県の各市町村の相談ブースや、先輩移住者の方の話が聞けるブースなどがあり、妻が目をキラキラさせている横で、移住に興味が1ミリもなかった僕は適当に話を合わせて帰ろうと思っていました。
今思い返すと相談員さんの「島根でどんな暮らしをイメージしてますか?」という質問に「昼からビールが飲める生活っすかね(笑)。」とか「田んぼを一日中眺める生活。」とか移住後の生活を舐めきった回答をしていたのが懐かしいです。
まぁそもそも当時は移住する気なかったので当然といれば当然かもしれません。(今気づいたけど全然適当に話を合わせれてなかったんですね。)
このフェアでも、もちろん雲南市のブースに相談に行き、ここで定住企画員さんと初めてお話をさせてもらいましたが、田舎暮らしのイメージも持てていない僕は、ほとんど何も話をすることなく終了しました。

そもそも僕はお金より時間が…と思いつつも、当時の仕事にはやりがいを持っていたし、それなりに好きでした。資格の勉強も頑張って資格を取得したり、社内試験を受けて等級もあがったりで、

「辞める理由がない。むしろこれから。」

正直、こんな気持ちだったんですよ。

5月、雲南市の移住体験プログラム(オーダーメイド型の移住体験プログラム)を利用して、雲南市へ行きました。
学校や保育所など、妻が希望した場所を案内してもらった後、温泉に入り、民宿に泊まりました。
田舎の良さが詰まりまくった内容だったと思います。しかし、ここでも僕の気持ちはあくまで“観光”の範囲を超えるものではありませんでした。
妻の「移住への具体的な思い」はどんどん強くなっていましたが、夫婦間ではっきりと移住することを合意をしている状況ではありませんでした。
もちろん、雲南市で出会う人は皆さんいい人だと思いましたし、自然も多くて気持ちいいな。とは思いました。
でも、正直な話、“いい人”ってどこにでもいるじゃないですか。
広島に住んでいても近所の人は優しかったし。
みんな言うんですよ、都会の人は冷たくて。みたいなことを。
でもそれって「田舎補正みたいなん入ってない?」と思ってたわけです。
だって都会の人でもいい人はいい人だから。
もちろん体験プログラムは楽しかったし、良い思い出になったのですが、それでも決め手にはなりませんでした。




3)『移住』の『自分事化』

体験プログラム終了後も定住企画員さんと妻のやり取りは続いていたようですが、僕はそれを外側から見ているだけで、いまいち本気になれていませんでした。
2ヶ月に1回程度、雲南市に帰省をしていましたがその帰省すらも移住に対するプレッシャーに感じ、負担になり始めていました。
何回も帰省していると、子どもが自然の中で遊ぶ姿が当たり前になり、当初よりも感動は薄れていく一方。なおさら、僕の中でただの“帰省先”という感覚が強まっていったのです。

そんな中、大きな転機が起こります。我が家に新たなベイビーちゃんがやってくるということがわかりました。先月2歳になった末っ子です。
3人目が生まれれば、2DKのアパートに5人で住むには狭い。
この時から僕も引っ越しを考えはじめます。もちろん、最初は「広島市内で」と考えていました。
当時の家より広い家となると広島市内では家賃も7万5千円~8万を超えてきます。
あくまで生活条件を変えなければの話ですが、広島市内の企業に勤めていた僕は車通勤ができるわけでもなく、駅近という条件をはずせないとなると、やはり家賃を抑えることは難しい。
また、このまま広島での暮らしを続けることが家族にとっていいことなのか、ということを改めて考えるようになりました。

ここでやっと妻と同じ土台に乗ったわけです。

移住を提案する皆さん。本来であればここですよ!このタイミング。
ここで「子どもも生まれるし…田舎に帰って子育てしたいんだけど。」という提案。

これならお互いが同じリングに立っている状態なので「うーん、そやなぁ」と一緒に考えることができるわけです。多分な。

話を戻すと、そこから僕ら夫婦は引っ越し先を『広島市内』にするのか、『雲南市』にするのか。という話し合いをするようになりました。
雲南市を選べば、仕事を辞めて、島根で仕事を探さなければいけません。
田舎に雇用はないというイメージのあった僕は、やはり可能性として移住は“低い”と思っていました。
ただ、第3子が生まれ、子供が育つ環境としては良い環境。というのは妻から話を聞いて思いました。
そこで初めて、定住企画員さんから聞いていた「中学卒業まで医療費が無料」とか「市内に総合病院がある」などの雲南市の情報と自分の移住が繋がってきたのです。
これが僕にとって『移住』が『自分事化』した瞬間です。
こうなれば、移住を提案した側の妻にとって確変突入といっても過言ではありません。

妻は第1子、第2子を出産した時から地元での子育てを強く望んでいました。
僕が転職をする前に勤めていた会社はライフワークバランスもとりづらく、帰りも遅かったため、妻の子育ては完全にワンオペ化していました。(言い分けです。)
家族全員疲弊していたと思います。
そういったこともあって、とにかく時間を優先できる企業に転職したわけですが、第3子が生まれるにあたって、子どもにとっても、僕たちにとっても「良い子育て環境」とは何か。を考えました。
目先の環境だけでなく、教育環境など、将来的な子供への影響も検討し、雲南市に移住するイメージをどんどん具体化していき、帰省のたびに、ドライブしながら地域を回ったり、道を覚えたり、暮らしていくイメージを膨らませていきました。




4)待つことも大事。

ここまで僕の経験を書いてきたように、やはり僕のような『妊娠・出産』などの大きな出来事がない限り、そうそう住んでいる場所、勤めている職場をやめるという決断をできるものではありません。
そもそも『移住』について真剣に考えるきっかけがありません。
もちろん、パートナーに「移住したいな~」と言われて2つ返事で「いいね!しよう!」と言えるような器の大きいイケメンくんであれば良かったんですが、僕はそうはなれませんでした。

この記事を通して伝えたいのは、『移住』をパートナーとともにするのであれば、提案する側は“待つ”ことも必要だということ。
「いつまで待てばいいの!?」と怒り狂う人もいるかもしれませんが、可能な限り待てば良いと個人的には思います。(切り出すタイミングは結構大事。)
結局、なし崩し的に移住したところで、お互いのためにならないと思うからです。
これまでの記事でも書いていますが、移住してからがガチンコの本番なんです。
移住後の生活では都市部で考えれないような地域の人との付き合いやしがらみに悩まされることもあるかもしれません。
そういったときに「自分が決めた」と思うことで、生活に主体性が出てくるのと出てこないのとでは大きな差があります。
これが移住をする前の心構えとして最低限の状態だと僕は思うんです。
僕も冗談で「妻に連れてこられて…」ということはありますが、本当のところは今回書いたような経緯で、移住が自分事になり、移住をしようと思って移り住みました。
『移住』が『自分事化』するのは人それぞれのタイミングがあります。

そして『自分事化』したその先には、やはり『住まい』と『仕事』の問題があります。
本気で考えてもタイミングが悪ければ仕事が決まらないことだってあります。
移住の相談となると「仕事はどうするの?」「住む場所は?」とどうしても具体的な話になりがちなんですけど、そもそも「なんで移住したいの。」ということをしっかりとお互いに確認するところから話してみてもいいと思うんです。

今回は、雲南市でも最近よく耳にする『連れられターン』みたいなパターンの連れてこられる側の立場の気持ちを当事者として僕なりに書いてみました。(これが全てではなく、勢いで来られた方もいます。結局人それぞれやで。)
これから夫婦や家族で移住しようと考えている方も、家族や相手の合意がないとなかなか話が進まないと思いますし、仮になんとなく動き始めても、お互いに想いが違ったりすると、後々になって話がまとまりにくくなってしまいます。
「思い立ったらすぐ行動!」という気持ちは移住においてとても大切だと思います。
そういった方の方が、間違いなくどんどん自分で進んでいけますし、移住してからも楽しめると思っています。
ただ、パートナーと移住するのであれば、パートナーはパートナーのペースで移住に気持ちが向く瞬間があるはずです。
もし今あなたの移住したい地域があるとして、パートナーと移住したいという気持ちがあるのなら、足を運んだり、行動することも大切ですが、パートナーにとって『移住』が選択肢の1つにすら入っていなければ、いつまでも実現できないかもしれません。




5)おわりに

あくまで今回のコラムでは「僕の場合」としてご紹介したまでですので、様々なパターンがあると思いますが、単身ではなく、ご家族等で移住を検討されている方の参考になればと思います。

色々と書きましたが、結果的には日々うんなん暮らしを楽しんでいます。

 

BBQにて。海老ちゃん。

 

牛タンちゃん。

 

二日酔いになりながらも家でBBQをして「田んぼを見ながら昼からビールを飲みたいっすね(笑)。」というなめ腐った田舎暮らしのイメージすらも実現できているので、僕の決断はそんなに悪いものではなかったのかなと思います。
みなさんも移住後に「君が移住したいって言ったから移住したのにyo!」とか言ってしまわないようにしっかり考えて移住しましょう。
まぁ僕は時々それっぽいこと言っちゃうんで(笑)。
男らしくないね~。ごめんね~。こんな人もいるので気を付けてください。おしまい。

最後まで読んでいただきありがとうございました。







【ライター紹介】

たにべえ。平成生まれ平成育ち。2019年春~広島→雲南。
少年時代の転校ラッシュで培った「どこでも誰とでも仲良くなる精神」が田舎でどこまで通用するか実践中。
お酒大好き。3児の父。週7バスケのバスケバカ。