空き家を探す

2023年08月24日
ぽんぽこ仮面

小さな夏祭り


 令和5年のお盆休みの最中、雲南市大東町久野地域の下組自治会では、コロナ前ぶりの夏祭りが開催された。この夏祭りは、ふれあい広場という小さな公園で行われる。都市部の人たちが想像するような、大層なサイズ感の夏祭りでは到底ない。しかし、小さなこの夏祭りにこそ、地域にとっての重要な“場としての価値”があるのだ。
 

 開催時刻ピッタリに足を運んでみると、公園の地べたにブルーシートと座布団、そして長机がズラリと並べられ、公園に宴会場ができたようだった。鉄板では豪快に肉と野菜が焼かれ、焼きそばが宙を舞っていた。生ビールのサーバや焼き鳥屋さんもあれば、かき氷屋さんまでいる。大人から子どもまで嬉しいラインナップだ。これらをすべて、自治会の諸先輩方が準備している。本当に頭が下がる。
 私たち家族も温かく迎えて頂き、大量の肉や焼きそばを頂いた。祭り気分で食べる焼きそばは、どうしてこんなにも美味しいものなのか。人との繋がりを感じながら食べるからこそであろうか。「もっと食え食え」とどんどん増えるテーブルの上の料理。腹も心もプクプクと満たされた。
 

 さて、今回の祭りで特筆すべきは、信じられないくらい子どもがいたことだ。下組自治会は十数件の世帯からなる小さな自治会。私たち夫婦が一番若い世代なのだが、見渡せば子どもが沢山いる。どこにこんなに子どもたちがいたのか。そう、この日はお盆休み。実家がこの地域にあるご家族がお子さんを連れて帰省をしてきているのだ。
 子どもたちのために、スイカ割りや花火も準備され、子どもたちの無邪気な声が響く。もちろん、かき氷屋さんは大人気で、1人で3杯も平らげた子もいた。親の心配をよそ眼に、嬉し気な笑みを浮かべるのは、その子どもとかき氷屋を買って出たお兄さんだった。
 

 都市部のような大きな祭りではない。見る人が見れば、ただのバーベキュー大会というかもしれない。しかし、これが下組の夏祭りであり、非日常の空間なのだ。この場があるからこそ、この地域にルーツを持つ者が気軽に集い、交流が続いていく。帰ってくる家だけでなく、場もあるということだ。数年ぶりの開催をみんな待ちわびていたことだろう。
 私たちのような移住者も参加することで、また今までにない交流が生まれ、私たち自身も日常の中では関わらない人たちともコミュニケーションをはかることができる。
 三重県から毎年帰省し、この夏祭りに10年以上も参加している方は、「大きな祭りではないけど、こうした田舎でしかない祭りもありかなって思うし大事だと思う」と語られた。
 
 
 田んぼに囲まれたステージでは、暗くなってもなおカラオケ大会が続く。虫や獣たちもびっくりしていることだろう。北島三郎『まつり』が夜の久野地域に響く中、三々五々帰路につき始める。みな言葉にはせずとも、「また来年」と背中で語っているようだった。


 

【ライター紹介】
ぽんぽこ仮面。京都府与謝野町出身、9年間東京で過ごした後に雲南市へ。
お風呂すき。サウナすき。キャンプすき。
毎日わくわくした大人でいたい教育業界の人。