雲南市には、皆さんが思い浮かべるような映画館はありません。
最新の映画を観ようと思うと、お隣の出雲市か松江市まで出かけることになります。
とはいえ、どちらも車で数十分。車移動が日常の人にとっては、それほど遠くは感じません。
けれど実は、雲南市にも映画を観ることができる場所があるのです。
それが “fukumimi木次”。
毎月23日に「エシカルフィルム上映会」として、自主上映をされています。
以前から気になっていたのですが、なかなか足を運ぶ機会がなく……。
そんな中、ようやく今月初めてお伺いすることができました。
上映されたのは、今年度のアカデミー賞を受賞したドキュメンタリー映画
『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』。
パレスチナのヨルダン川西岸地区マサーフェル・ヤッタで暮らす青年と、
イスラエル人ジャーナリストが協力して、
イスラエル軍の住居破壊や強制移住に抗う姿を記録した作品です。
ニュースで見聞きしていた出来事が、現地の人の表情や声とともに映し出され、
胸の奥にずしんと響きました。
現地の人々は、住居や命を奪われる理不尽さに、悲しさとやりきれなさ、
そして強い憤りを抱えていました。
同時に、どうしようもできない現実に対する深い諦めも感じ、
その心の重さが画面から伝わってきました。
それでも映像から目をそらすことはできませんでした。
そこに映っていたのは、私たちの日常からは想像しにくい“現実”であり、
「知ることの重要性」を強く訴えかけてくるものでした。
夫と一緒に鑑賞したのですが、帰りの車の中では、映画を観て感じた憤りや悲しみ、
考えさせられたことなどを互いに話し合いました。
他国の悲惨な現状を見て、ふと我が身を振り返ります。
私たちは、理不尽に誰かを追い詰めていないだろうか。
自分たちを正当化して誰かを傷つけていないだろうか。
そのことに無自覚になっていないだろうか。
そんなことを思うきっかけにもなりました。
会場ではパレスチナ産のオリーブオイルが販売されており、私たちも1本購入しました。
ほんのわずかでも、何かの力になればという思いを込めて。
私たちは上映後すぐに会場を後にしたのですが、会場の雰囲気からは、上映後に来場者同士や
主催者が感想を語り合うような時間もありそうだな、ということを感じました。
映画を通して感じたことを共有したり、
自分の考えを整理したりできる場所になっているのだろうと思います。
残念ながら、fukumimiさんは現在の場所での活動を12月で終了されるそうです。
今後の拠点が雲南市内になるのか、市外になるのかはまだ未定とのこと。
私は、できればまた雲南市で続けてほしいなと思っています。
静かな空間で、人と人、そして世界がつながるあの時間。
人口約34,000人の小さな雲南市ですが、こうした活動があり、
同じ関心を持つ人たちが集まる場所がある。
ここからでも、
世界の現実や平和について考えることはできる──そのことを、改めて実感したひとときでした。