俣野彰一さん・由紀さんご夫妻
由紀さん―長い間大阪や東京など都市部で働いていたこともあり、以前から地方への移住に興味を持っていて、セカンドライフは田舎で暮らしたいと思っていました。息子の自立とともに本気で移住について考えるようになり、ネットで地方移住について調べてみたり、仕事の合間に東京にある地方のアンテナショップに行ってパンフレットなどを集めてみたり、移住に向けて少しずつ動き始めました。
彰一さん―タイミング的にも僕の定年退職が近づき、仕事もひと段落して、今後の生活について考える時期でした。移住先を探している妻の姿を見て、僕もだんだん「田舎暮らしも楽しそうだな」と思うようになりました。お互い移住に対して本気で考えるようになってから、田舎暮らしや移住に関するイベントに参加するなど、情報収集をしっかり行いました。関西に住んでいるころは阪神淡路大震災を、関東に住んでいるころは東日本大震災を経験していたので、ハザードマップをしっかり調べるなど、約2年間かけ移住に向けて準備を進めてきました。
   お互い神話や古代史が好きであることや神社巡りが趣味であることから、神話のふるさとと呼ばれている島根県への移住を検討するようになりました。島根県への移住について調べているうちに雲南市の定住ポータルサイト『ほっこり雲南』にたどり着きました。デザインの仕事をしていたこともあり、ホームページの見やすさなども重視していたので、『ほっこり雲南』はとても見やすく、印象が良かったです。松江市や出雲市は知っていたけれど、雲南市は知らなかったので調べてみると、神話が多く残る地域で、さらに日本初之宮と呼ばれる須我神社があり、私たち夫婦にとって魅力的なまちでした。当時雲南市にはお試し体験施設があったので1週間滞在し、実際に雲南市で生活してみました。驚いたのは、野菜や魚、お米など食べ物がおいしいところです。食べ物がこんなにもおいしいとは想像していなかったので、感動しました。また、お試し体験施設に滞在していた期間に夏祭りがあり、施設の2階から花火を眺めることができて、とても気分が高まりました。春は満開の桜が眺められるということも聞き、こんなまちで暮らせたら…と思うようになりました。
  彰一さん―セカンドライフとして移住を考えていたので、週5日の9時から17時で働くような生活はイメージしていませんでした。仕事をしながら地域に馴染んでいけるような、また今まで自分たちが経験してきたことやスキルを活かせる仕事があれば、と思っていました。市役所の文化財課に資料を借りたりしているうちに、発掘調査や出土品の管理などのアルバイトをしないかと声をかけてもらいました。趣味や知識が活かせるので、楽しく仕事ができました。市役所の仕事は年度末で終了したので定住財団へ相談したところ、三刀屋高校の寮の舎監の募集があると聞き、家からも近く土日だけの仕事だったので、勤務することとなりました。他にも今までの経験を活かして、雲南市の印刷会社のオペレーターの仕事もしています。
由紀さん―移住前の仕事に関連するということで、飲食店や産直市場を経営する企業にアルバイトとして働くことになりました。ですが、体調を崩し手術をすることとなり、長期で休みを取ることになったので、そのタイミングで退職しました。その後、体調が回復してから、ハローワークの紹介で介護の資格が取れる職業訓練に通うことになりました。研修先のデイサービスで「研修が終わったらここで働かないか?」と提案してもらい、家から近いことと、週3日の勤務だったので、研修後から働くことにしました。地域のお年寄りの方とおしゃべりする中で、雲南市の歴史や神社や古墳にまつわる話などが聞けて、意外にも介護職と自分の趣味がつながり楽しく仕事をしています。
   お試し滞在施設に入居している間に、雲南市内で車がなくても生活できる地域の空き家を紹介してもらいました。その時にはピンとくる物件はなく、一旦千葉へ帰りましたが、帰ってからも定期的に空き家バンクをチェックしていました。滞在する前は空き家バンクを見ても地名から周辺施設や距離感がイメージできなかったですが、一度雲南市に滞在したことで空き家の位置や周辺施設がイメージできるようになり、空き家を探しやすくなりました。その後、雲南市の街部で気になる物件が登録されたので、物件を見学しに再度雲南市を訪れました。残っている家財を片づけたら住めそうだったことと、病院やスーパーも自転車で行ける立地だったこともあり、2人でしっかり考え、この物件であれば何とか生活できそうだと思い、まずは1年間の賃貸借契約をしました。というのも、自分たちには車もないので、本当にこの地域で生活できるか一度暮らしながら考えたいと思ったからです。半年生活して「この地域で生活できる」と実感できたので、移住から半年後に売買契約をしました。
   とてものどかで自然豊かな場所です。昭和の古き良き生活が残っている場所だなと思います。三世代で暮らしている家族が多かったり、おうちの田畑で作ったお米や野菜を食べて暮らしていたり、登下校中の子どもたちが挨拶をしてくれたり、地域の大人が子どもを見守っているところなど…。都会ではすっかりなくなってしまった生活が雲南市には根強く残っているので、とても新鮮です。地元の皆さんは自然に対する知識が豊富で、例えば「カマキリの卵が低い位置にあるので今年は雪が少ない」など、普段の会話の中で当たり前のように話していることが私たちにとっては初めて知ることだらけで、とてもおもしろいです。また、私たちの趣味でもある神話や神社巡りも、今までは本や地図で見て終わることもありましたが、実際に訪れることができ、地形や景色などを自分の目で見ることで新たな発見があります。神社はもちろん、ちょっとした祠や石碑も地元の方はとても大切に扱い、きれいに掃除されたりしています。神社などが生活の一部として地域とともに生きているのだと感じ、改めて素敵な地域だなと思います。
   私たちは車を持っていないので、交通機関には悩まされました。生活する分には自転車で移動できる範囲で困りませんが、私たちの趣味の神社巡りをしようと思うと難しい面があります。行きはバスで行けるけれど、帰りのバスの時間がないことや、家からそんなに離れた場所ではないはずなのに、移動が1日がかりになることも。車があるのが当たり前の地域なのでバスの利用客は少ないし、バスの本数が少ないこともしょうがないとは思います。免許を取得しようかと思ったこともありますが、雪が降ると地元の方でも運転することが怖いと言われていたので、車の運転は諦めました。せっかく車がなくても生活できる場所に住んでいるのだから、車なしの生活を楽しんでいます。とはいえ、車があればとても便利な立地です。松江市や出雲市も近く、広島にも行きやすいですよ。
   自分はなぜ移住をしたいのか、その目的をはっきりさせることが大事です。子育て環境のためなのか、老後のためなのか。何を1番に考えて移住をするのか、目的がはっきりしていないと、移住後のギャップは感じやすくなると思います。目的をはっきりさせて、自分の目的に合う移住先を見つけるためにしっかり情報収集することをオススメします。
島根県は移住対応の窓口が充実しているので、窓口をフルに活用しないと損します。様々な場所へ案内してもらえるし、田舎暮らしの知恵や情報も教えてもらえます。自分だけで考えていてもわからないことだらけで、いつまでたっても移住への道が開きません。私たちも雲南市の定住企画員に様々な相談をしました。相談することでどんどん話が進んでいったので、とても助かりました。実際に現地を訪れて、わからないことは各自治体の移住担当者にとにかく聞いて、頼りたいことはとことん頼る。それが大切だと、私たちは移住をして感じました。




 
俣野彰一さん・由紀さんご夫妻
2017年6月に千葉県からIターン
<2020年12月取材>