山本典生さん

 

地方への移住を考えたきっかけを教えてください。

長年の都会暮らしから、せかせかした暮らしよりのんびりとした暮らしがしたいと漠然と考えていました。ただ、考えているだけで口に出したり行動に移すことまではしていなかったです。そんなある日、自宅のテレビから田舎暮らしの特集の番組が流れていて、妻に「田舎暮らしってどう思う?」と聞いてみたところ、意外にも「いいんじゃない?ちょっと憧れる」といった回答が返ってきて、そこから移住に対する想いが一気に加速していきました。その頃、都会に住んでいても“農業”というワードを耳にするくらい農業が盛り上がっている雰囲気があったので、「移住するなら農業かな?楽しいのかな?」と気になって調べてみると、担い手不足という課題があることを知りました。担い手不足であるなら、僕が農業の担い手として活躍しよう!と決心し、移住の方向性が見えてきました。
ある程度方向性が見えてきて、いよいよ移住先を決めるときに、僕や妻の両親など大阪の家族のことを考えたらあまり遠くない場所がいいかな、と思うようになり、島根県であれば車で行って帰れる距離だし、大阪で『しまねUIターンフェア』を行っていて相談しやすい環境だったので、まずは島根県で考えようと思いました。

 

雲南市への移住の決め手は何でしたか?

雲南市への移住の決め手は3つあります。
1つ目は、長女の部活です。当時長女は大阪の中学校でバドミントン部に所属していて、移住先でもバドミントンは続けたいという希望がありました。島根県でバドミントン部がある中学校を探すと松江市・出雲市・雲南市のエリアに絞られました。松江市や出雲市は自分たちが想像している田舎暮らしよりは少し都会だという印象がありましたが、雲南市はハードルが高すぎない、ほどよい田舎だったので、決め手となりました。
2つ目は、雲南市役所の移住サポートの手厚さです。『しまねUIターンフェア』に参加したときも、雲南市のブースはほかの自治体と比べると1番熱意を感じました。定住企画員を窓口に、各部署と連携を取りながら様々な提案をしてくれました。しっかりと僕たちの声を聞いてくれるので、こちらも安心して頼ることができました。
3つ目は、松江市と出雲市どちらにもアクセスしやすい立地です。田舎暮らしがしたかったとはいえ、長年都会に住んでいたので都会を感じたいと思うときもあり…。そんなときは、車を30分ほど走らせれば松江市や出雲市に遊びに行けるという利便性も魅力でしたね。

 

仕事はどうやって決められましたか?

とにかく自分がやりたい農業のイメージを定住企画員に伝え、その内容を農業の担い手支援担当の農政課に相談してくれました。当時、雲南市吉田町で農業に関する新たな構想があり、その代表が営む農事組合で農業体験をしました。その農業体験や、僕のやりたい農業について市役所の皆さんが代表に伝えてくれたことがきっかけで「ぜひ山本君と一緒にやりたい」という回答がありました。とは言ってもまだ雇用ができるような段階ではなく、これから動き始める事業なのでどういった形で働けるか…など考えていたら、市から地域おこし協力隊を提案してもらいました。子どもが3人いるのでしっかりと稼げるかどうか、自分のイメージしている農業ができるかどうかを考えた時に「これならやっていけそう!」という提案をしてもらえたので、地域おこし協力隊として3年間従事することになりました。
元々農業に触れたこともなかったのでざっくりとしかイメージがありませんでしたが、実際にやってみると農業の奥深さにどんどん惹かれていきます。生産・販売・人事・総務…。農業はオールラウンドプレイヤーになれます!

 

住まいはどうやって決められましたか?

定住企画員に希望を伝えて空き家を探してもらいました。バドミントン部がある中学校区で探すと、かなり限られた地区になりましたね。そんな限られた地区でも、学校に近く状態のいい物件がタイミングよく見つかり、入居できました。車で5分走らせればスーパーやホームセンターなど何でもそろっているので、安定した生活が送れています。家の周りには農地があり、その農地を借りて耕作しています。

 

雲南市に暮らしてみた感想を教えてください。

市役所の人が親身になって相談に乗ってくれることに驚きました。大阪に住んでいたら、こんなにも市役所の人と関わることはなかったです。僕の場合、うんなん暮らし推進課と農政課にお世話になりましたが、他の部署の方にも「大阪から来て農業やってるんだって?頑張って!」と声をかけられることも。親しみやあたたかみを感じます。
雲南市自体に流れる空気がのんびりしているので、おだやかに暮らせます。家と家が離れているので、まわりを気にせずBBQができることも魅力です。庭が広いので、家の前で広々とできますよ。移住者の交流会も頻繁に行ってくれるので、移住者同士で仲良くなれるのは心強いです。
大阪に住んでいる頃は子どもが起きている時間に帰宅できないことが多く、子どもたちと顔を合わせる機会が少なかったです。今は家で過ごす時間が多いので、毎日家族と一緒にご飯を食べることができます。大阪に住んでいた頃よりも子どもたちが僕に寄ってくるようになった気がして、子どもと接する時間は大切だな、と気づきました。

 

移住してみて困ったことはありませんか?

お店が少ないことです。ファストフードやファミレス、人気スイーツ店など…大阪で当たり前のようにあったお店は、雲南市にはありません。個室がある飲食店も少ないので、小さい子供がいると騒いだり泣いたりしたときに周りの目を気にしてしまいます。子育て世帯が気軽に入れるお店が1店舗でもあると便利ですね。
あとは、お酒を飲みに行きにくいですね。バスや電車は使える地域が限られているし、夜は走っていません。代行運転もないし、タクシーはすぐに運行終了する。誰かが運転しないと、飲みに行けません。家族に迎えを頼むこともありますが、そうすると時間も気になって気兼ねなく飲むことはできないな…と。
移住当初は出雲弁がわからず苦労しました。特に僕が勤務している吉田町は訛りが強く、一緒に農業をしている方々の会話など、ほとんど聞き取れませんでした。でも、「わからないです」と伝えるとわかりやすく説明してくれたので、今は少しずつわかるようになりました。

 

雲南市の子育て環境はどうですか?

子育て制度は手厚いので、助かっています。自然に囲まれた場所というのはもちろんですが、家が密集していないので音も気にすることなく、子どもたちものびのびと生活しています。近所の方も「子どもは大きな声を出して育つものだからね」と理解してくれているのも助かります。
ただ、意外と保育所には入りづらかったです。雲南市内でも地域差があり、いつでも入所可能な地域もあれば、競争率の高い地域もあります。なかなか自分の希望通りには入所できませんでした。

 

 

これから地方へ移住を考えている方にメッセージをお願いします。

子どもがいてのびのびと子育てしたいと思うなら、雲南市のような田舎をオススメします。田舎暮らしはハードルが高いと思っている方もいますが、そんなにハードルは高くありませんよ。お店もある程度揃っているし、宅配便もしっかり届きます。不自由はありません。
移住を検討している地域には何回か訪れてみた方が選択肢が広がります。僕も移住前に5回ほど雲南市を訪れて、様々な提案をしてもらいました。単身だと勢いで移住できる人もいますが、家庭があるとなかなか勢いでは難しい。何回も訪れてゆっくり慎重に考えてみてください。そして、移住に関する困りごとがあったら市役所へ相談してみましょう。都会では感じたことのない親近感があり、気軽に相談できますよ!


 
山本典生さん
2019年8月に大阪府からIターン
<2021年2月取材>