石坂明政さん・志乃さんご夫妻


地方への移住を考えたきっかけを教えてください。

明政さん―テレビやYouTubeで田舎暮らしの番組を見て「田舎暮らしって楽しそうだな」と思ったことがきっかけです。本気度高く考えていたわけではありませんでした。
志乃さん―毎日遅くまで仕事をして、二人の時間は週末だけで…という生活を変えたいな、と思っていて。夫婦仲良く田舎暮らしをしているYouTubeを見てうらやましくなり、移住を考え始めたのがきっかけです。

 

雲南市への移住の決め手は何でしたか?

何となく移住に関心が出てきましたが何をしたらいいのかわからず、とりあえず全国規模のオンライン移住フェアに参加しました。そしたら各自治体の移住してほしい熱量がすごく、自分たちはまだ参加するのは早かったな…と退出を考えていた時に出会ったのが雲南市の相談ルームでした。私たちのレベルに合わせて、移住のリアルについて相談に乗ってくれて、ほっこりした雰囲気がとても良かったのが第一印象でした。印象も良かったので行ってみようと、雲南市の移住体験プログラム『雲南つながる体験』を活用し、1泊2日で雲南市を訪れました。実際に行ってみると定住企画員は良いことも悪いこともしっかりと説明してくれて、紹介してもらった移住者の先輩の話も背伸びしていない等身大の姿が素敵で、移住体験を機に本格的に雲南市へ移住したいと考えるようになりました。

 

仕事はどうやって決められましたか?

明政さん―移住するなら仕事が問題だと悩んでいたところ、たまたまうんなん暮らし推進課のインスタグラムで雲南市役所が社会人経験者採用枠を募集していることを知り、ダメ元で受けてみました。そうしたらまさかの合格で!本当は1年計画くらいでゆっくりと移住に向けて進める予定でしたが、あっという間に移住することになりました。
志乃さん―私はずっとIT系の仕事をしてきたのですが、移住するなら会社勤めではなく農業をしてみたいと考えていました。全く経験がないのに前のめりな「農家になりたい!」という思いを定住企画員は否定せず汲み取ってくれて、ふるさと島根定住財団の事業である産業体験を利用することを提案してくれて、体験先の候補として『あごうや農園』を紹介してもらいました。少量多品種のため様々な野菜を種まきから収穫・販売までライフサイクル通して経験できること、大型の機械を使っていないので就農のイメージがしやすいことなど、私のレベルや今後を考えて最適な農家さんを紹介してもらいました。当時を振り返ってみると、農業について全く知識がないのに農業をやってみたいと無茶苦茶なことを言っていたな、と恥ずかしくなるばかりですが、体験先の吾郷さんが丁寧に寄り添っていただいたおかげで、1年間本当に貴重な経験ができました。

 

現在の仕事を教えてください。

明政さん―実は市役所を退職してトレーニングジムを開業し、パーソナルトレーナーをやっています。元々筋トレが大好きで、移住してからも仕事終わりに出雲市のジムへ通っていました。毎日往復1時間、週6で通うのも大変だし、古民家に住むという憧れもあったので、住まい兼ジムとなる空き家を探していたら不動産会社の方から「うちの会社に空いているスペースがあるから使っていいよ」と提案してもらった勢いで、自分のジムを作ってしまいました。友達に筋トレを教えてあげているうちに楽しくなって、気が付いたら市役所の仕事を辞め、パーソナルトレーニングジム『トレベヤ』を開業しました。自分は起業するタイプとは全く思っていなかったので、正直今でも信じられないですが、筋トレ漬けの毎日はとても楽しいです。
志乃さん―1年の産業体験で農業の楽しさや大変さを体感したことで、自分の甘さや覚悟の無さを痛感し、就農は諦めました。でも農作業は好きなので産業体験先の『あごうや農園』でバイトをしています。残りの時間は、大学生のキャリア支援を行う『一般社団法人umi』で働いていて、農業からキャリア支援とマルチワーク的に働いています。
 
 

住まいはどうやって決められましたか?

市役所の内定をもらい、2ヶ月で住む場所を決めることとなり、とりあえず手早く住める民間のアパートを探しました。東京と違い賃貸情報がほとんどなく、毎日毎日賃貸サイトにアクセスして空き物件を探し、Google Mapの航空写真や不動産サイトに載っている写真などを必死で解析して決めました。内覧もできなかったのでとても不安でしたが、結果いい物件に出会えて今でも快適に住んでいます。一軒家に住みたいという憧れはあるので、いい空き家に出会えたら引っ越したいなと思っています。
 
 

雲南市に暮らしてみた感想を教えてください。

明政さん―東京で当たり前にあったものが雲南市にはなく、本来ならば不便に感じるはずなのに、暮らしていて不便に感じていません。東京で当たり前だったものを必要だと感じていない自分たちに驚いています。色々なものが揃っている方が良いという先入観に囚われていたのだなと感じます。コンビニやスーパーは近くにありますし、ネットショッピングで頼めばすぐに届きます。田舎暮らし=不便というイメージがありましたが、車があれば不便に感じることはありません。
志乃さん―コワーキングスペース『三日市ラボ』で仕事をしていますが、起業された方や主婦の方、異業種の方など様々な層の方と気軽に話せる場になっていて、多種多様な人が出会える独特な空間、独特な人との距離感があって、言葉で表現しづらいのですがとても面白いです。10年以上会社勤めしていたのに、自分は狭い世界にいたのだなと痛感しました。
 
 

移住してみて困ったことはありますか?

志乃さん―公共交通機関があまり充実しておらず、車がないと不便です。元々は夫婦で車1台でしたが、1人1台は必要だと感じて追加で購入しました。移動が車なので、移住してからお酒を飲みに行くことのハードルが高くなりました。たまに友達の家に泊まって飲んだりしています。
明政さん―雪が結構降りますが、今まで雪の降る地域に住んだことがなく1年目は色々と大変でした。雪道の走行は怖く、また冬を迎える前にタイヤ交換をする手間も増えました。2年目はもう慣れたのでトラブルもなく、そつなくこなせたかな、と思います。積雪が多いからこそ周辺のまちよりも除雪がしっかりしているので、雪道の走行も慣れてきました。移住前は何も知らない地域での生活に不安もありましたが、現時点でそこまで困ったことはありません。
 
 

雲南市の起業支援はどうですか?

雲南市商工振興課の担当者がとても親切で、補助金の内容や申請方法まで丁寧に教えてもらえたので、市の補助金を活用することができました。初期費用や家賃補助など充実していて本当に助かりました。周りで起業をしている先輩移住者も多く、気を張らず自分のペースで仕事をしている様子を見ていたので、そんな先輩の姿も背中を押してくれたきっかけとなりました。
 
 

これから地方へ移住を考えている方にメッセージをお願いします。

興味をもった地域には一度行ってみることをオススメします。行ってみると自分たちのイメージする暮らしとその地域が合う・合わないが見えると思うので。オンラインで調べることもできますが、実際に行って五感で感じることも大切かな、と思います。私たちも『雲南つながる体験』を利用して訪れたことがきっかけで、雲南市への移住を具体的に考えるようになったので。
私たちみたいに何となく勢いで移住し、勢いに流されるままに過ごしていたらうっかり起業して毎日楽しく暮らしている、というパターンもあります。地方へ移住をして、生活してみてから変わるものも本当に多いので、とりあえず来てみて暮らしを体感してほしいです。



 
石坂明政さん・志乃さんご夫妻
2021年3月に東京都からIターン
〈2023年4月取材〉