自然の恵みと技術を生かして“おいしい”麺をつくる
創業70年、雲南の地で麺を作り続けてきた出雲たかはし。3代目社長の高橋大輔さんは24歳のとき、父親から突然、社長職を譲られた。それから13年、悩みもがきながら売上を伸ばし、年商約5億円になるまで成長させた。「当時55歳だった父親が急に飲み屋で『わしはやめる』と。強烈なバトンタッチでした。何もわからなくて。でも救われたのが、年上の工場長が『だいちゃん、わからんでしょ。何でも自分に聞いてごせ。支えるけん。』と言ってくれたこと。泣きそうになって、何とか頑張ろうと思いました。父親からも麺はやめてもいいがとにかく社員を路頭に迷わせたらだめと言われていました。」
当時、進学した東京からUターンしてわずか3年余り。わからないなりに気になることがあった。商品に「まずい」というクレームが届いていることだ。電話や手紙でわざわざ「まずい」と言われると落ち込むが、一方でその商品が売れてもいた。悶々とする日々。通販を始めてみようとまずは現場の社員に聞いてみた。すると、買う商品と買わない商品がはっきり分かれた。「社員が一番わかっている。まずい麺を作っていた。それなのに原価ばっかり見ていた。やっぱり、おいしい麺を作ろう。」
技術加工には自信があったため、素材を研究した。小麦粉はもちろん、相性のいい水を求めて試作を繰り返し、そう遠くない場所で最高の水を見つけた。麺の透明感やぷりぷり感が全く違う。都会ではこんなに近くでこれほどの水を手に入れることは難しいだろう。雲南だからできることだ。
従来は他社のブランド製品を作るOEMが多かったが、自社製品の開発に力を入れた。しじみだしラーメンや飛魚だしラーメン。いい素材を使い価格も高かったことから最初は苦戦したが、関東地方の高級スーパーや百貨店で扱われるようになった。ヒット商品の1つがインスタントにゅうめん。添加物なしで保存はきくという、常識を覆した「身体にいいインスタント麺」。高級料亭で引き合いがある。「簡単調理で使い勝手が良くて日持ちもして、もちろん安心安全、適正価格。安心安全は大事ですが、利便性も大事にしています。」と高橋さん。
社内の空気も変わってきた。毎年の経営方針発表会。高橋さんが考えてきたビジョンを次は社員がチームを組んで決めることになった。5年後には新工場も建設予定だ。「地域にある自然の恵みを使い、うちも地域の中にある。最終的には社員はもちろん、地域の人たちが息子や友達に入ってほしいというような会社にしたいですね。」
毎日が同じじゃない。工夫しながら働く面白さ
雲南市木次町で生まれ育った田部梨央さん。就職先として希望していたのは地元の会社だった。「高校時代、体調がよくなかった時期があったのですが、食べ物や運動など気を付けてよくなりました。このきっかけで食品や健康について勉強したい気持ちが高まり、進学先も栄養学科にしました。やっぱり地元が良かった。家族や友人がいて安心するし、家から通えるのがいいです。県外でも企業の説明会へ行きましたが、ここには住めないなと。地元のようにゆったりしているところがいいと改めて感じました。地元の食品会社の求人票を見つけたときはうれしくて。社長が参加しているイベントに行って履歴書を渡し、その後、面接を受けて入社しました。」
入社したのは2014年4月。麺づくりの最前線の現場で働いている。「ラーメンとそばの製造室などを経験して、昨年からはラーメン専用の機械がある第3製造部門の主任を務めています。朝8時に出勤し、制服に着替えて製造開始です。粉や水などを合わせたものがミキサーから出てきますので、重さと厚さを調整して確認、麺の状態で箱詰めするまでの作業です。ずっと同じ現場というよりは、工場内を歩いて様子を見ています。お昼の休憩をはさんで、17時半には掃除をして終わります。」
学生時代より社会人になってからのほうが楽しいと笑顔を見せる。「お客さんから直接感想を聞くことはないですが、毎日、異常がないように、クレームがないようにとやっています。家族や商品をあげた人が“おいしかったよ”と言ってくれるのが一番うれしいです。休日や仕事終わりに高校時代の先輩と、桜の時期じゃなくても土手を散歩したり、大東町のほたるを見に行ったりします。雲南にいるから昔の友達と遊べます。毎日が同じじゃない。工夫しながらやる面白さもありますし、安定したものがつくれるように、今やっていることをこれからもやり続けたいです。」
Q & A 一問一答
Q おすすめの麺は?
A 麺は好きです!300種類くらいある自社商品は全部食べました。一番お気に入りは、冷やし中華麺ですね。他社のもよく食べますし、麺を食べない日はないですね。食べ過ぎて、20キロ太りました(笑)。(高橋社長)
Q Uターンのきっかけは何ですか?
A 全然違うところに行きたいと東京に出て、クラブDJをしていました。ちょうどへこんでいたときにJR山手線のつり広告が全部島根県だったことがあり、ちょっと帰ってみようかなという軽い気持ちだったんですよ。(高橋社長)
Q やめたいと思ったことはありませんか?
A ミスした時に先輩が「どうした?」って話しかけてくれて、話を聞いてもらって楽になりました。嫌なことがあっても、わかってくれる人がいると頑張れます。上司や先輩に相談しやすい雰囲気です。(田部さん)
Q 学生と社会人で違いがありますか?
A 学生の時より今のほうが楽しいですね。もちろん、仕事は楽しいことばっかりじゃないですが、オンとオフのメリハリがあり、自由な時間もある。自分で働いて稼いだお金があるからこそ休みも遊べます。<span style="font-family: " noto="" sans="" japanese",="" "hiragino="" sans",="" kaku="" gothic="" pron",="" meiryo,="" sans-serif;"="">(田部さん)
こんな人と一緒に働きたい!
▷食に興味がある人
▷コツコツと取り組める人
夢中になれるものや好きなものがある人、でしょうか。冬は忙しいですが、結構土日が休みで、有給もあります。休みの日にちょっとした目標を持つことで、一生懸命働いて時間内に仕事終えて、頑張ろう!みたいなのがいいですね。
企業概要
株式会社出雲たかはし
代表者 代表取締役 高橋大輔
創 業 昭和24年7月1日
設 立 昭和43年8月1日
従業員数 30名(うちパート8名)
事業内容 ●製麺製造業(そば、うどん、ラーメン、そうめん、パスタ等)
●食肉販売業
所在地 〒699-1113
雲南市加茂町東谷371₋1
電話番号 0120₋11₋6509
HP https://izumo-takahashi.com/
<取材時期>
2017年